どう響くか

キーがCなら C → Am → F → G。数字をとって「1645」とも呼ばれます。はじめの2歩と最後の1歩で、動き方がはっきり違うのがこの進行の特徴です。

Ⅰ→Ⅵm→Ⅳと進むあいだ、隣り合うコードは2音ずつ共有していて、CとAmはC・Eを、AmとFはA・Cを持ち合っています。3つの音のうち2つが残るので、コードが変わったというより、1音だけ入れ替わって色が変わったように聴こえます。

ところが3つめのFから4つめのGへ移るところで、共有する音がひとつも無くなります。F(F・A・C)とG(G・B・D)は、3つの音がそろって全音上へ動く関係にあります。

手をつないだまま歩いてきた3つに対して、最後だけ全員が同じ方向へ一歩踏み出す形です。この段差が、4つめで景色が変わったという感覚を作ります。

そして進行は、その一歩を踏み出したところで終わります。Ⅴは帰り着く場所ではないので、頭のⅠ(C)へ強く引き戻されます。この「終わらせずに次を待たせる」終わり方を半終止と呼びます。踏み出して、引き戻されて、また踏み出す。ずっと回し続けられるのはこのためです。

どこで使われるか

1940年代末に生まれ1950年代に流行したドゥーワップ(コーラスグループが主役のR&B)で多用されたことからこの名前で呼ばれます。英語では「'50s progression」とも言います。

ザ・ファイヴ・サテンズ「In the Still of the Night」(1956年)のような当時のヒット曲がこの形です。続くベン・E・キング「Stand by Me」(1961年)があまりに有名になったため、「Stand by Me changes」という呼び名も生まれました。

50年代に閉じた古い進行かというとそうではありません。ビートルズ「Octopus's Garden」(1969年)は、キーEで E - C♯m - A - B とそのままこの4つです。コーラスグループの持ち物だった形が、10年あまりでロックバンドの曲を普通に支えるところまで広がっていました。

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さらに時代を下って、エド・シーラン「Perfect」(2017年)も同じ4つのコードでできています。60年以上を隔てた曲が同じ形を使っていて、どれも素直で暖かい響きに聴こえます。

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ちなみに小室進行(Ⅵm-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ)は、この進行と同じ並びをⅥmから読み始めただけの形です。どちらもループさせると流れは1音も変わらず、4つをどこで切るかだけが違います。

小室進行は切れ目が内側のⅤ→Ⅰに来るので、そこでがっちり終わります。ドゥーワップ進行は切れ目が周と周の継ぎ目に来るので、着地しないまま次の周へ渡ります。

同じ4つのコードを使うポップパンク進行(Ⅰ-Ⅴ-Ⅵm-Ⅳ)は、これとは事情が違います。ⅤとⅣの居場所そのものが入れ替わっているので、どう回しても同じ並びにはなりません。

こちらは最後がⅣ→Ⅰで、ふわりと戻ります。しっかり終わらせたいのか、軽く流したいのか、勢いをつけたまま回し続けたいのかで選び分けられます。

派生形

Ⅳ を Ⅱm に変える

3つめのⅣ(F)をⅡm(Dm)に差し替えると、循環コード(Ⅰ-Ⅵm-Ⅱm-Ⅴ)になります。FとDmはF・Aの2音を共有していて、違うのはCとDの1音だけです。

たった1音の違いですが、変わるところは2つあります。ひとつはベースの動きです。元の形は C → A → F と3度で2段下りてから、最後にGへ全音上がります。

Ⅱmにすると C → A → D → G となり、A→D、D→G、そして頭のCへ戻る G→C と、4度上がる動きが3つ続けて並びます。4度上がる動きは次のコードを呼び込む力が強いので、それが途切れないまま輪が閉じる。「循環」という名前はここから来ています。

もうひとつは、Ⅳ→Ⅴにあった段差です。あそこには共有音がひとつもありませんでしたが、Ⅱm→Ⅴ(Dm→G)はDを持ち合っています。差し替えると段差が消えて、代わりに全体がなめらかに繋がります。

4つめで景色が変わる感じは、Ⅳのままでないと出ません。ぐるぐる回したいなら循環コード、途中で一度景色を変えたいならドゥーワップ進行、という選び分けになります。

なおⅣに6thを足したF6(F・A・C・D)は、Dm7(D・F・A・C)と構成音が完全に一致します(3度ずつ積んだⅣM7はF・A・C・Eなので、こちらは別のコードです)。三和音のうちは違う響きでも、足す音を選ぶと同じ4音に行き着く関係です。

Stand by Me の8小節にする

「Stand by Me」は4つのコードを均等に並べるのではなく、8小節でひとまとまりにしています。Ⅰとその次のⅥmを2小節ずつ引き伸ばし、ⅣとⅤだけ1小節ずつで通り過ぎて、最後にⅠへ着地する形です。

前半でたっぷり時間をとってから後半で倍の速さになるので、Ⅳ・Ⅴのところで前へ押し出される感じが出ます。またⅤで止めずにⅠへ帰ってくるので、4小節をそのまま回し続ける形と違って、8小節でひと息のまとまりになります。同じ4つのコードでも、どこにどれだけ時間を割くかで役割が変わる例です。