どう響くか
数字をとって「4536」とも呼ばれます。キーがCなら F → G → Em → Am。聴きどころは3つめです。Ⅳ(F)からⅤ(G)へ進むと、耳はその次にⅠ(C)が来ることを強く期待します。
ところが実際に来るのはⅢm(Em)で、期待が外されます。Ⅴのあとを別のトニック代理へ逸らすという点で、偽終止(Ⅴ→Ⅵm)と同じ発想の外し方です。
この外し方が絶妙で、EmはCと2つの音(EとG)を共有しているため、着地に失敗した感じはせず、「明るく終わるはずが少し陰った」という微妙な色合いだけが残ります。そのままⅥm(Am)へ落ちて、切なさが確定します。
どこで使われるか
日本のポップスでとにかくよく使われる進行で、「王道」の名はそこから来ています。ドラマチックに盛り上げたいサビや、感情が高ぶる場面と相性がよく、アニメソングやバラードで頻繁に耳にします。
Official髭男dism「I LOVE...」、あいみょん「君はロックを聴かない」は教科書どおりのⅢmの形で使われています。同じOfficial髭男dismの「Same Blue」は、後述するⅢ7に差し替えた形での使用例です。
一方で使用例が多いぶん既視感も出やすいので、後ろに別の進行をつなげたり、コードに7thを足したりして表情を変える工夫がよくされます。
派生形
Ⅲmをセカンダリードミナントに変える
「期待を裏切って着地する」役目のⅢm(Em)を、そのままⅢ7(E7)に変える手があります。Emの構成音(E・G・B)のGをG♯に上げ、さらに7thのDを足した形です。
これによってⅢ7はⅥm(Am)へ向かうセカンダリードミナントになります。緊張を作っているのは加わったG♯とDの組み合わせで、この2音は三全音の関係にあり、次のⅥmへ強く引き寄せられます。丸サ進行のⅢ7と同じ仕掛けです。
Ⅲmのときの「少し陰る」ふわっとした着地に比べて、Ⅲ7は「そこへ向かって落ちていく」という能動的な動きに変わります。切なさの質が変わる派生形です。