ミクソリディアンとは

メジャースケールの一種です。比べる相手は同じ主音のメジャースケール。

メジャー(アイオニアン)ミクソリディアン の比較 — 違うのは 1だけ

メジャー(アイオニアン)
C1
D2
E3
F4
G5
A6
B7
ミクソリディアン
C1
D2
E3
F4
G5
A6
B♭♭7

違いは7度が半音下がる1音だけです。キーCなら B が B♭ になります。3度(E)はそのままなので、響きは明るいままです。明るいのに、メジャースケールのようにはきっちり終われない ── それがミクソリディアンです。

導音が無いと、なぜ終われないのか

メジャースケールの7度(キーCなら B)は導音と呼ばれ、主音の半音下に位置します。

BC半音
メジャースケールの導音 B は、主音 C の半音下。狭いぶん強く引き寄せられる
CB♭全音
ミクソリディアンの♭7(B♭)は主音から2半音(全音)離れる。引力が弱まる

半音は音階の中でいちばん狭い距離で、そのぶん引力が強く働きます。ケーデンスでⅤ7→Ⅰ が最強の着地になるのも、Ⅴ7がこの導音と、それが4度の音とのあいだに作る三全音を抱えているからでした。

ミクソリディアンにはその導音がありません。帰ろうとする力がそもそも弱いので、どこまでも回り続けられます。ロックやファンクの「同じところをぐるぐる回るのに飽きない」感覚は、この性質から来ています。

♭7が作る2つの主役コード

Ⅰ7 ── トニックがドミナント7thになる

主音の上に3度ずつ積むと、C・E・G・B♭ になります。これは C7、つまりドミナント7thの形です。

CEGB♭長3度短3度短3度
ミクソリディアンのⅠに7thを足すとⅠ7(C7)。トニックなのにドミナント7thの形になる

普通のメジャーキーでは、C7 は「Fへ向かうための助走」(セカンダリードミナントのⅤ7/Ⅳ)でしかありません。ところがミクソリディアンでは、これが居座り続けるトニックになります。12小節ブルースがⅠ7から始まって延々と解決しないまま進めるのは、この考え方があるからです。

Ⅶ ── 全音下のメジャーコード

もう1つの主役がⅦ(キーCなら B♭)です。普通のメジャーキーには存在しない、主音の全音下にあるメジャーコードです。

ダイアトニックコード

キーⅡmⅢ°ⅤmⅥm
CCDmEdimFGmAmB♭
C♯/D♭C♯D♯mFdimF♯G♯mA♯mB
DDEmF♯dimGAmBmC
E♭/D♯E♭FmGdimA♭B♭mCmD♭
EEF♯mG♯dimABmC♯mD
FFGmAdimB♭CmDmE♭
F♯/G♭F♯G♯mA♯dimBC♯mD♯mE
GGAmBdimCDmEmF
A♭/G♯A♭B♭mCdimD♭E♭mFmG♭
AABmC♯dimDEmF♯mG
B♭/A♯B♭CmDdimE♭FmGmA♭
BBC♯mD♯dimEF♯mG♯mA

表の綴りは、鳴らしたときの音を優先して読みやすい形に寄せています。理論どおりに書くとC♯ミクソリディアンのⅲ°は E♯dim ですが、譜面ではまず見かけないため Fdim と表記しています。

7thを足した形と、特徴音♭7(キーCなら B♭)を含むかどうかの一覧です。

度数 3和音 7th ♭7を含む
C C7 (7thのみ)
Dm Dm7
ⅲ° Edim Em7♭5
F FM7
Gm Gm7
Am Am7
B♭ B♭M7

メジャーキーとの違いは、ⅲがディミニッシュに、Ⅴがマイナーに、Ⅶが♭Ⅶのメジャーコードに変わることです。メジャーキーで一番強い着地を作っていたⅤ7が使えなくなり、かわりに使いどころの多いⅦが手に入る、という交換になっています。

定番の進行

Ⅰ-Ⅶ-Ⅳ-Ⅰ

ロックで最もよく聴く形です。

B♭→F と F→C は、どちらも同じ関係になっています。F から見れば B♭ がⅣ、C から見れば F がⅣ。つまり Ⅳ→Ⅰ が2回続いているわけです。

Ⅳ→Ⅰ はケーデンスで見たプラガル終止(アーメン終止)でしたから、この進行はプラガル終止を2つ重ねた形ということになります。Ⅴ7を使わずに、それでも力強く着地できる仕組みです。

Ⅰ-Ⅶの2コードループ

ドリアンのⅰ-Ⅳと同じで、2コードの往復が一番ミクソリディアンらしくなります。

Ⅰ7-ⅣM7

7thを足した形です。トニックだけがドミナント7thで、Ⅳは M7 のままなのがポイントです。

ブルースとの違い12小節ブルースでは、ⅣもⅣ7(キーCなら F7)にします。ただし F7 の構成音 F・A・C・E♭ に含まれる E♭ は、ミクソリディアン(C・D・E・F・G・A・B♭)には無い音です。つまりブルースは、ミクソリディアンの一部を使いながらもそれだけでは説明できない独自の音使いを持っています。「Ⅰ7が主役になれる」という一点だけが共通している、と捉えるのが正確です。

ミクソリディアンらしさが消えるとき

Ⅴ7を使う

ⅴ(Gm)を Ⅴ7(G7)にすると、G7 の中の B が導音として働き、その瞬間に普通のメジャーキーへ戻ります。ミクソリディアンを保つなら、5番目のコードはマイナーのままの ⅴ にするか、そもそも使わずにⅦとⅣで回します。

Ⅶを一度も鳴らさない

Ⅰ・ⅱ・Ⅳ・ⅵ だけで進行を組むと、♭7がどこにも出てこないため、使っている音がメジャースケールの中に完全に収まってしまいます。♭7を含むコード(Ⅶ・ⅴ・ⅲ°)か、Ⅰ7を必ず入れるのがミクソリディアンの条件です。

どんな音楽で使われるか

ロック、ブルース、ファンク、そしてアイルランドやスコットランドの伝統音楽。どれも「終止して静まる」よりも「回り続ける」ことが曲の推進力になっている音楽です。

ブルースから派生したポピュラー音楽全般に、この♭7の感覚が染み込んでいます。

ただし、ギターのマイナーペンタ(♭3と♭7を含む5音)がメジャーキーの伴奏に乗る現象は、♭7だけでなく♭3も持ち込む、ブルース由来のものです。上のブルースの話と同じで、ミクソリディアンと共通しているのは♭7の部分だけ、と捉えると混乱しません。

Chordrift で試す

  1. モード選択でミクソリディアンを選ぶ
  2. Ⅰ と Ⅶ の2コードでループを作る
  3. スケール表示をONにして「♭7」の位置を確かめる

メジャースケールと1音しか違わないので、その1音を弾くかどうかがそのままミクソリディアンかどうかになります。7度を踏むたびに景色が変わるのを確かめてみてください。

ミクソリディアンのスケール表示:Ⅶ(B♭)を選択した状態。♭7を含むコードがどれか見える

水色がⅦ(B♭)の押さえ方。指板上の「♭7」の位置がⅦの構成音そのものになっているのが見える