五度圏とは

五度圏(サークル・オブ・フィフス)は、12の調を完全5度ずつ上がる順に並べて輪にしたものです。12時の位置に C を置き、時計回りに G・D・A…と進みます。12個進むと、ちょうど元の C に戻ってきます。

音楽理論の図の中で、これがいちばん働き者です。調号がいくつ付くか、平行調はどれか、その調でどのコードが使えるか、どのコードからどのコードへ進むと収まりがいいか、どの調へ転調すると自然か ── 全部この1枚から読み取れます。

逆に言えば、読み方を1つずつ覚えていく図であって、眺めただけでは何も分かりません。

下の図は押せます。押した調が選ばれ、その調で使えるコードが円の上で光り、同時に音が鳴ります。図の下に並ぶ7つのコードもそれぞれ押せて、押した場所が円の上で光ります。▶ を押すと Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ が順に鳴ります。

内側のマイナーを押したときも、選ばれるのはペアになっている外側の調です。平行調は同じ7音を共有するので、どちらを押しても光る場所は変わりません(その理由はこのあと出てきます)。

CAmⅥm♯1GEmⅢm♯2DBm♯3AF♯m♯4EC♯m♯5BG♯m♯6/♭6F♯/G♭D♯mE♭m♯7/♭5C♯/D♭A♯mB♭m♭4A♭Fm♭3E♭Cm♭2B♭Gm♭1FDmⅡmCAm調号なし

円を押すとその調が選ばれ、コードが鳴ります。▶ は両隣を往復する Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ

まず見た目の内訳から確認します。

  • 外側の輪 … メジャーキー(C・G・D…)
  • 内側の輪 … その調号を共有するマイナーキー(Am・Em・Bm…)
  • いちばん外の小さな文字 … 調号。♯や♭がいくつ付くか

なぜ12個で一周するのか

完全5度は7半音ぶんの距離です。C から7半音上がると G、そこからまた7半音で D。これを繰り返すと、いつかは出発点の C に戻ります。何回で戻るかは計算できて、7と12の最小公倍数が84、つまり 7半音 × 12回 = 84半音 = 7オクターブちょうどです。

12回積んで、ぴったり7オクターブ上の C に着く。だから五度圏は12個で閉じた輪になり、13個目や11個目にはなりません。1オクターブが12の半音に分かれていることと、5度が7半音であることの、両方から決まっている数です。

厳密に言うと、閉じるのは平均律だからです。物理的にきれいな完全5度(周波数比 3:2)で12回積み上げると、7オクターブより少しだけ(約23.5セント、半音の4分の1弱)行き過ぎてしまいます。このズレはピタゴラスコンマと呼ばれます。現代の楽器はこのズレを12回ぶんに薄く分け合う平均律で調律されているので、輪はきれいに閉じます。ギターのフレットもピアノの調律もそうなっています。

時計回りで♯が増え、反時計回りで♭が増える

五度圏がただの音の並びで終わらないのは、調号が順番に増えていくからです。時計回りに1つ進むごとに♯が1つ増え、反時計回りに1つ進むごとに♭が1つ増えます。

なぜそうなるのかは、スケールの構成音を並べてみるとすぐ分かります。まず Cメジャースケール。

CDEFGABC全音全音半音全音全音全音半音
Cメジャースケール。全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音の並び

次に、5度上の Gメジャースケール。同じ「全全半全全全半」の並びを、今度は G から作ります。すると G A B C D E F♯ となり、最後の音だけが F ではなく F♯ になります。

使っている音を、主音の順ではなく音名を揃えて並べると、違いがはっきりします。

C D E F F♯ G A B
Cメジャー
Gメジャー

入れ替わっているのは F と F♯ の列だけで、残りの6音はそっくり同じです。5度上へ行くと、いつもこの形になります。新しく♯が付くのは新しいキーの第7音、つまり主音のすぐ下の音です。

反時計回りも同じ理屈で、こちらは第4音に♭が付きます。C から反時計回りに1つ進んだ F メジャーは F G A B♭ C D E で、B が B♭ になった1音だけが違います。

この「隣どうしは1音しか違わない」という性質が、あとで出てくる転調の近さにそのまま効いてきます。

同じ場所に名前が2つあるのはなぜか

図の6時から7時のあたりを見ると、F♯/G♭ や C♯/D♭ のように2つの綴りが併記されています。同じ高さの音なのに名前が2つあるのは、どちらの綴りで書くかで調号の数が変わるからです。

C♯メジャーは♯が7つ、同じ高さの D♭メジャーは♭が5つで、譜面に書くなら♭5つのほうが読みやすい、という話です。

一方で、A♭ の位置には「G♯メジャー」と併記していません。理由は綴りにあります。G♯から「全全半全全全半」で音を積むと G♯ A♯ B♯ C♯ D♯ E♯ F× となり、最後にダブルシャープ(F×)が出てきます。

ダブルシャープを含む調号は実用の譜面ではまず書かないので、この調は同じ高さの A♭メジャー(♭4つ)で書きます。

D♯メジャー(D♯ E♯ F× G♯ A♯ B♯ C×)と A♯メジャーも同じ理由で、譜面ではほとんど見かけません。だから五度圏に並ぶ12個は、C・G・D・A・E・B・F♯(G♭)・C♯(D♭)・A♭・E♭・B♭・F の顔ぶれになります。Chordriftのキー選択も同じ12個です。

図の調号ラベルを一周ぶん眺めると、♯が1つずつ増えて ♯7(C♯)で打ち止めになり、そこから先は♭4・♭3…と♭側で数え直しているのが分かります。

輪は閉じているので、時計回りに増え続けた♯は、どこかで♭の綴りに乗り換えないと元の C に戻れません。その乗り換え地点が、名前が2つある6時〜7時のあたりだというわけです。

内側の輪は平行調

内側に並ぶマイナーキーは、外側のメジャーキーの平行調です。平行調どうしはまったく同じ7音を使い、どこを中心(主音)として聴くかだけが違います。だから調号も共有します。

Cメジャーの7音は C D E F G A B。この並びを6番目の A から始め直すと、Aナチュラルマイナースケールになります。

ABCDEFGA全音半音全音全音半音全音全音
Aナチュラルマイナースケール。使う音はCメジャーと同じ7つで、半音の位置(B→C と E→F)が並びの2番目と5番目に来る

使う音が同じでも、半音の来る位置が変わります。Cメジャーは3番目と7番目のあとに半音が来て、Aマイナーは2番目と5番目のあとに来る。この半音の位置の違いが、明るさと暗さの違いの正体です。同じ7音でどこを中心に据えるかで響きが変わる、という考え方を7通りに広げたものがモード(旋法)です。

ダイアトニックコードは円の上で隣り合う

ここからが五度圏の本領です。ある調で使える7つのコード(ダイアトニックコード)は、円の上でひとかたまりに集まります。

図でキーを選ぶと、外側で3つ・内側で3つが光ります。Cメジャーなら外側が F・C・G、内側が Dm・Am・Em です。位置で言うと、選んだ調とその両隣(時計回りに1つ・反時計回りに1つ)、そしてその3つの内側。バラバラに散らばらず、必ずこの形になります。

どのキーで試しても同じです。下は A メジャーを選んだ状態にしてありますが、光っているのはやはり「両隣+その内側」の6つで、形ごと回っているだけだと分かります。

CAm♯1GEm♯2DBmⅡm♯3AF♯mⅥm♯4EC♯mⅢm♯5BG♯m♯6/♭6F♯/G♭D♯mE♭m♯7/♭5C♯/D♭A♯mB♭m♭4A♭Fm♭3E♭Cm♭2B♭Gm♭1FDmAF♯m調号 ♯3つ

円を押すとその調が選ばれ、コードが鳴ります。▶ は両隣を往復する Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ

なぜこうなるのかは、ダイアトニックコードのルート音を5度順に並べ替えてみると分かります。Cメジャーで使える7音は C D E F G A B ですが、これを完全5度の順に並べ直すと F → C → G → D → A → E → B となり、7音が切れ目なく連続します。

連続するのは偶然ではありません。メジャースケールは、そもそも完全5度を6回積んで作った7音(F から数えて F・C・G・D・A・E・B)だからです。

作り方が五度圏の並び方そのものなので、円の上でひとかたまりになるのは当たり前、というわけです。マイナースケールとそのモードも同じ7音の並べ替えなので、同じようにひとかたまりになります。

ただし、この「連続する」性質はダイアトニックスケールに限った話です。たとえばハーモニックマイナー(Aハーモニックマイナーなら A B C D E F G♯)は、第7音を半音上げたぶんだけダイアトニックから外れています。5度順に並べると F・C →(G が抜ける)→ D・A・E・B →(2つ飛んで)→ G♯ となり、2か所で穴が空きます。

そのうえで、それぞれの音を根音にした3和音の種類が決まります。

  • F・C・G … メジャーコード(Ⅳ・Ⅰ・Ⅴ)
  • D・A・E … マイナーコード(Ⅱm・Ⅵm・Ⅲm)
  • B … ディミニッシュコード(Ⅶ°)

ここで、内側の輪が平行調だったことを思い出してください。Dm は F の平行調、Am は C の平行調、Em は G の平行調です。つまり3つのマイナーコードは、外側で光っている3つの、それぞれ真下に置かれています。

ルートの並びとしては F C G D A E B と円を7つぶん使うのに、図の上では2段6つのかたまりに見える。マイナーを平行調の位置へ折り返して置いてあるからです。五度圏の図がコンパクトにまとまっているのは、この折り返しのおかげです。

残るⅦ°(Bdim)だけが光りません。五度圏はメジャーとマイナーの2つの輪でできていて、ディミニッシュを表す輪が無いからです。ルートの B 自体は円の上(E の1つ時計回り)にありますが、そこに置かれているのは B メジャーと G♯m なので、Bdim として光らせようがない、ということです。

図の下のコード一覧でⅦ°を押しても円が光らないのはそのためです。なぜ B だけディミニッシュになるのかはダイアトニックコードの記事で構成音まで追っています。

図の外側と、その下のコード一覧とで、同じ高さの音に違う名前が出ることがあります。たとえば C♯ を選ぶとⅤは G♯ と表示されますが、外側の輪の同じ場所には A♭ と書いてあります。調として書くなら A♭(♭4つ)、C♯キーの5番目のコードとして書くなら G♯ が理論どおりの綴りで、鳴る音はどちらも同じです。同じ理由で、C♯キーのⅢmは理論上 E♯m ですが、譜面ではまず見かけない綴りなので Fm と表示しています。

ついでに、いわゆるスリーコード(Ⅰ・Ⅳ・Ⅴ)が外側の隣り合う3つだということも読み取れます。12小節ブルースが世界中どこでも同じ形をしているのは、この隣り合う3つだけで組み立てられているからです。

反時計回りに歩くとコード進行になる

五度圏には2通りの読み方があります。ここを混ぜると分からなくなるので、はっきり分けておきます。

読み方 円の上の点が意味するもの
調の輪 キー(C=Cメジャーキー、内側の Am=Aマイナーキー)
音の輪 コードのルート音(C=ルートがCのコード)

調号を調べたり転調先を探したりするときは調の輪、コード進行の動きを追うときは音の輪です。ここまでは調の輪として読んできました。ここからは音の輪として読みます。Dm も D7 も D も、ルートはどれも D なので、円の同じ位置にあると考えます。

ひとつ前の節で Dm が F の真下に光っていたのは、調の輪の読み方です(Dm は F メジャーの平行調だから、そこに置いてある)。音の輪では、同じ Dm をルートの D の位置に読み替えます。同じコードでも、何を知りたいかで見る場所が変わる ── ここだけ意識しておけば、あとは迷いません。

そう読むと、反時計回りに1歩=ルートが完全5度下がる動きになります。これはコード進行でいちばん強い動きで、強進行と呼ばれます。Ⅴ→Ⅰ(G→C)はまさにこの1歩です。

Ⅰから時計回りに1つ出て、反時計回りに1歩で戻る。Ⅴ→Ⅰが特別に強く着地して聴こえるのは、このルートの動きに加えて Ⅴ7 の中の三全音(キーCなら B と F)が解決するからで、そのあたりはケーデンスの記事に譲ります。

ここで押さえたいのは、その動きが円の上では「反時計回りに1歩」という単純な形をしていることです。

同じ往復に Ⅳ を足したものが、図の ▶ が鳴らす Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ です。ただし Ⅳ→Ⅴ(F→G)だけは強進行ではありません ── 円の上では時計回りに2つ飛ぶ動きで、5度の連鎖から外れています。

それでも定番として使われるのは、Ⅳ と Ⅴ が「Ⅰへ帰る手前の踏み台」という役割で結びついているからです。五度圏で説明できるのは進行の一部で、全部ではありません。

1歩で終わりにせず、続けて歩けば進行が伸びます。Ⅱm→Ⅴ→Ⅰ(Dm→G→C)はルートが D→G→C と動くので、円の上を反時計回りに2歩。これがツーファイブワンです。

もう1歩さかのぼって Ⅵm から始めれば3歩ぶん、A→D→G→C と歩きます。循環コード(Ⅰ-Ⅵm-Ⅱm-Ⅴ)を Ⅵm から始めた形が、ちょうどこれです。

順番に鳴らすと、1歩ごとに「もう1歩進みたい」という引力が働き続けるのが分かります。歩数はいくらでも伸ばせるので、ターンアラウンド(曲の終わりから頭へ戻す仕掛け)にはこの連鎖がよく使われます。

最後のⅠへ着いたあと、次の周回の頭までは円を大きく飛び越えることになりますが、そこは「歩いて戻る」のではなく着地してから跳ぶと考えると読み解けます。

セカンダリードミナントは時計回りの隣から連れてくる

音の輪として読むと、円の上のどのコードにも「時計回りの隣」がいます。そしてその隣は、いつでもそのコードへの強進行の出発点です(そこから反時計回りに1歩戻れば、元のコードに着くからです)。ここからセカンダリードミナントがまっすぐ説明できます。

Ⅱm(Dm)へ強く入りたいとします。Dm のルート D から時計回りに1つ隣は A です。だから A を、しかも7thを足した A7 にして Dm の手前へ置く。

これがキーCにおける Ⅴ7/Ⅱm です。A7 は Cメジャーの7音に無い C♯ を含みますが、行き先の Dm から見れば正規の Ⅴ7 なので、ちゃんと着地して聴こえます。

同じ手が Ⅲm・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵm にも使えます。行き先のルートから時計回りに1つ隣のコードを、7thにして手前に置くだけです。五度圏を1つ持っていると、この計算を暗算しなくて済みます。

Ⅶ°にだけは作りません。行き先そのものが不安定なディミニッシュなので、そこへ強く着地させても収まらないからです(→セカンダリードミナント)。

転調の遠さが測れる

「隣どうしの調は1音しか違わない」という性質は、そのまま転調の距離になります。五度圏の上での距離が、そのまま聴いたときの遠さです。

転調先 円の上の距離 共通する音
属調・Ⅴの調(C → G) 6音
下属調・Ⅳの調(C → F) 6音
平行調(C → Am) 同じ位置の内側 7音(ナチュラルマイナーなら全部)
C → E♭ 3つぶん 4音
C → F♯ 対岸(6つぶん・いちばん遠い) 2音

隣の調へ移ると6音がそのまま残るので、ほとんど段差を感じません。持ち上がる感じが欲しければ時計回りへ、落ち着かせたければ反時計回りへ。

平行調にいたっては調号すら変わらないので、気づかないうちに移っているような聴こえ方になります。逆に3つぶん・対岸まで離れると共通音が半分以下になり、はっきりと景色が変わります。

Jポップでよくある半音上げの転調(C → D♭)も、円の上では反時計回りに5つぶん離れた場所で、共通音は2つしかありません。半音上がるだけなのに、調としては大きく飛んでいる。

「サビの終盤で急に景色が変わる」あの効果は、この見た目と実感のギャップから来ています。近い調へは滑らかに、遠い調へは劇的に ── どちらを狙うかで行き先を選べるのが、五度圏を持っている強みです。転調そのもののやり方は転調の記事で扱っています。

ちなみに、円の対岸どうしにはもうひとつ面白い関係があります。正反対に位置する2つのルート(C と F♯、G と D♭…)から作った7thコードは、同じ三全音を共有していて互いに入れ替えられる ── これが裏コードです。

調としてはいちばん遠い場所どうしが、和音としては一番近いところで繋がっているわけです。

なお、転調するときの橋渡しには、両方の調に属するコード(ピボットコード)を使います。どのコードが両方に属するかも五度圏で読めます。2つの調で光る範囲を思い浮かべて、重なっている部分がそれです。C と G なら、外側の C・G と内側の Am・Em の4つが重なります。

近い調ほど、この橋がたくさん架かります。逆に対岸まで離れると重なりが無くなるので、橋を渡る手は使えません。そういうときは、橋を架ける代わりに行き先のⅤ7を鳴らして強引に引っ張り込むことになります。

Chordrift で試す

このアプリは進行を度数(Ⅰ・Ⅳ・Ⅴのような、キーからの相対位置)で持っています。だから、進行を作ったあとでキーを変えても、コード進行の形はそのまま保たれて全部のコードが移調されます。五度圏でいえば、輪をぐるりと回しても、光っている6つの位置関係は変わらないということです。

  • 進行を作ってから、キーを1つずつ隣へ動かしてみる。ボーカルの音域に合わせたいときの探し方です
  • セクションごとにキーを変えて、隣の調と対岸の調の落差を聴き比べる
  • コード候補に出てくる借用和音は、光っている6つの外から連れてきたコードです。どこから来たのかは借用和音の記事で扱っています

五度圏は暗記するものではなく、手元に置いて読むものです。上の図をキーごとに押しながら、「反時計回りの隣がⅣ、時計回りの隣がⅤ、内側が3つ」という形が回るのを何度か眺めれば、それで十分に使えます。